2026年1月8日木曜日

Lounge Jazz とはなにか ―― ソシアルな空間のための、洗練されたジャズ

「ジャズ=即興(アドリブ)」

そう考える方は多いと思います。

もちろん、即興演奏はジャズの重要な要素ですし、
私自身もモダンジャズのセッションに参加することは楽しめます。

ただ、長年現場に関わる中で、
セッションに参加すること自体が、音楽的にも、仕事的にも、
必ずしも意味を持つとは限らない

という考えを持つようになりました。


即興を「目的」にしないジャズ

多くのジャズ教室では、
「即興ができるようになること」
が最終目標として掲げられています。

しかし実際には、

  • 定型フレーズの暗記

  • よくあるパターンの組み合わせ

に留まっているケースも少なくありません。

私が重視しているのは、
即興そのものではなく、音楽を組み立てる思考です。

例えば、私の教室で用いている
リー・エバンスの教材では、
いわゆる「よくある即興フレーズのコピペ」は行いません。

エバンス先生は、

「作曲とは、紙の上でする即興であり、
作曲こそが即興の練習である」

という考え方を示されています。
私はこの思想をとても大切にしています。

楽譜に書かれたジャズ曲のピアノ編曲作品を丁寧に読み、
和声、構造、旋律の流れを理解する。

その結果として、
即興的に演奏できる感覚が自然に育つ――
このプロセスを重視しています。


「ジャズスタイルのポピュラー」という系譜

私の音楽観に大きな影響を与えたものの一つに、
日本を代表するジャズ教育家・稲森康利先生が提唱された
「ジャズスタイルのポピュラー」
という考え方があります。

これは、本物のジャズの和声や語法を用いながら、

  • 即興合戦ではなく

  • メロディー

  • 編曲

  • アンサンブル

  • 音楽としての完成度

を重視する音楽です。

欧米では、ソシアルな場には必ず社交ダンスがあります。
その社交ダンスのための音楽として発展したのが、
この「ジャズスタイルのポピュラー」です。

私たちは、この系譜の音楽を
Lounge Jazz(ラウンジ・ジャズ)
と呼んでいます。


Lounge Jazz は「妥協」ではない

若い頃の私は、正直に言って、
この種の音楽をあまり好んでいませんでした。

しかし、実際のプロの現場に関わるようになるにつれ、
考えは大きく変わりました。

  • ただメロディーを弾く

  • 歌を支える

  • アンサンブルとして音楽をまとめる

これは、
派手な即興以上に、
はるかに高い集中力と音楽的成熟を要求される仕事
です。

残念ながら、日本のライブハウスで行われる
「モダンジャズのセッション」では、
アドリブには神経を使う一方で、
テーマやメロディーの扱いが軽視されている演奏も少なくありません。

また、クラシック演奏家が
「軽い気持ち」で
「ムーン・リバー」や「イパネマの娘」などを演奏したものも、
往々にしてイージーで、音楽的な感動を生みません。

さらに言えば、
日本のモダンジャズ・セッションの演奏は、
得てしてスウィングしない傾向があり、
これでは「ダンスの伴奏」は成り立ちません。

Lounge Jazz は、
そうした傾向とは正反対の、
本物のジャズサウンドで、踊れて、歌える音楽です。


第一級のジャズメンが残した「With Strings」の名盤

Lounge Jazz には、
「ジャズをちゃんとできない人が、
ごまかしながら演奏する音楽」
という誤解がつきまといがちです。

しかし実際には、
歴史に名を残した第一級のジャズメンたちが、
ストリングス・オーケストラを伴奏に即興を行った
名盤が数多く存在します。

例えば――

  • チャーリー・パーカー
     《Charlie Parker with Strings》

  • クリフォード・ブラウン
     《Clifford Brown with Strings》

  • マイルス・デイヴィス
     《Quiet Nights》

  • ビル・エヴァンス
     《From Left to Right》

また、
カーメン・マクレエ、ビリー・ホリデイといった
名だたるジャズ・ヴォーカリストたちも、
With Strings 作品を数多く残しています。

これらはすべて、
メロディーと編曲、アンサンブルを軸にした
極上の Lounge Jazz
と言えるでしょう。


現実的な目標としての Lounge Jazz

興味深いことに、
ジャズピアノ教室に来られる生徒さんの多くは、
モダンジャズのセッションよりも、
Lounge Jazz 的な世界観に強い関心を示されます。

  • 人前で弾ける音楽

  • 雰囲気を大切にした演奏

  • 仕事や生活と両立できる目標

そうした意味で、
Lounge Jazz は
現実的で、長く続けられるジャズの形
だと感じています。


まとめ

「ライブハウスのモダンジャズ・セッション」を
否定するつもりはありません。

ただ、ジャズにはさまざまなスタイルがあり、
一つの価値観に偏ることで、
音楽そのものが痩せてしまうこともあります。

私たちが提唱する
Lounge JazzVintage Swing も、
十分に目標とするに値する
ジャズスタイルであり、学習課題です。

また当教室では、
Lounge Jazz や Vintage Swing のレッスンにおいて、
多くのジャズ教室では軽視されがちな

  • ピアノ奏法

  • ボーカル歌唱法

といった基礎スキルの向上も重視し、

より美しく、自然で、深く、
そしてスウィングする音楽
を目指しています。



※Lounge Jazz や Vintage Swing に興味のある方は、
実際の演奏・レッスンについてもお気軽にご相談ください。

大阪・梅田芸術劇場北向い
Kimball Piano Salon 梅田音楽教室
講師・藤井一成

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